代官山 蔦屋書店文学コンシェルジュが、とっておきの一冊をご紹介します

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『ビューティフル・デイ』
ジョナサン・エイムズ 唐木田みゆき訳 ハヤカワ文庫 580円


おとといまでハワイにいて、浜辺で合計20冊ぐらい本を読んでいたのだけど、もっとも心に残った本。

第70回のカンヌ映画祭で脚本賞と男優賞をW受賞した本書の主人公ジョーは48歳。元FBIにして元海兵隊員で、 現在は都会の闇に落ちた女性や少女の救出を得意とするフリーのトラブルシューターをやっている。
屈強な男だが、恐ろしい生い立ちと過酷な任務のため精神はボロボロ。自分の存在を消しながら生き、あこがれの死に方を考える日々だ。

ある日、「娘が誘拐された。助けてほしい」という依頼が上院議員から来る。この先ストーリーは二転三転。
「えっそうなの!」「まさか!」という小さな悲鳴をあげつつ、ページをめくる手が止まらなかった。

この手の話によくある過剰なマッチョさはなく、アクションに満ちた展開なのに淡々と話は進むところが斬新。
ジョーのお母さん、秘密の連絡先に使っているお店のお父さんとその息子など、出てくるシーンは多くないのに印象に残る人々がいるのも魅力的だ。

そしてラスト。映画でも小説でも、「ここで終わったらすごくカッコイイのに!」と思う作品に、いらぬ「説明」とか 「後日談」とかがついて間延びし、ガックリくることが多いのだが、本書は心の中で「ここで終われ!」と叫んだところでみごと終了。

あざやかさ、余韻が素晴らしい!



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【プロフィール】
間室 道子
代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ。
雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。
雑誌『婦人画報』、朝日新聞デジタル「ほんやのほん」などに連載を持つ。
書評家としても活動中で、文庫解説に『タイニーストーリーズ』(山田詠美/文春文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)などがある。